法人・個人事業が、税務調査で否認されないために
税務調査で否認されないポイントは、毎日記帳して、特に現金残高が帳簿残高と一致していることを確認する。
(税務署はきちんとしているところからは取りたくても税金を取ることはできません。)
毎日PC入力できない場合には、現金出納帳だけでも記載して、現金残高を合わせる。
確定申告書の“業種番号”は正確に記載する。
(税務署は、業種番号でデータを管理しています。)
税務署の「業種指導」・・・業種指導は1日に何件もこなさなければならないので、規模が小さいところが選ばれる可能性が大きいです。
確定申告書・決算書の注意点
税務署がまずチェックするのは、利益と粗利益率
粗利益率は前年と比較して著しく低かったり、同業平均と比較して低いと危ない
個人事業の場合、差引金額は年間生活費を表す
あまりに低いとどうやって生活しているのか不審に思われる(生活費が経費になっていないか等)
売上は、過去の実績と比べて、極端に変動している場合に注意
交際費の金額が例年多すぎる場合は注意
その年だけの特別な事情は、「特殊事情」として記載する
調査は、まず売上に重点が置かれる
原始記録(領収書控・請求書控・ジャーナル・注文書等)と元帳とのチェックから、売上の漏れを確認
ジャーナルの切れ目に注意
領収書の書き間違えは修正液を使わず、二本線で取り消す
材料費・外注費・売上高の流れ・結びつきをチェック
「金額が大きい経費」と「変動の激しい経費」がねらわれる
仕入は粗利率で検討される 棚卸の金額にも注意(粉飾決算の有無)
会計ソフトに仕訳を入力する際に最初に注意すること
まず、現金出納帳の現金残高、通帳の預金残高を会計ソフトの残高に一致させる
預金勘定は口座ごとに補助科目を使って通帳の残高と会計ソフトの補助科目ごとの残高の一致を確認する
内容や仕訳不明なものは、仮払金や仮受金で処理して、後で再度適切な科目に変更する
補助科目の有効利用
売上高や仕入高を取引先ごとに集計する・・・取引先ごとにどれだけ取引があるのか一目で把握できる
水道光熱費・・・水道代や電気代など、支払いの内容ごとの支払金額が把握できる
損益計算書と貸借対照表のどちらを重点的にチェックすればいいのか?
特に貸借対照表の各勘定科目の残高に注意する(マイナス金額はもってのほか)
現金・預金は当然ですが、売掛金・買掛金・金融機関ごとの借入金・差入保証金・預り金等
当座貸越契約などで当座預金の残高がマイナスの場合には、短期借入金に計上する(当座預金の残高はゼロになる)
当座預金 / 短期借入金
通帳からの現金の引き出し、預け入れ
現金出納帳に現金の引き出し、預け入れの金額が漏れやすいので注意
現金はできるだけ使わない(経理の効率化のため)
ガソリン代や高速料金はクレジットカードを使う・ETCの活用
領収書や請求書の保存はどうすればいい?
領収書は、日付順にして貼る(証拠資料となる)
請求書は、日付順か、取引先ごとにして日付順にする
通帳を作る際に注意することは?
事業と生活の通帳を完全に分ける
書き損じの領収書、請求書
2枚に折ってホッチキスで綴じておく(破って捨てると、売上の漏れとされる。)
領収書の日付と会社から出金した日が異なる場合
会社から実際にお金が出ていった時の日付で仕訳する(領収書に実際の支払日を記載する)
交際費や福利厚生費として認められるにはどうすればいいの?
交際費や福利厚生費は、支払った人が内容や相手を必ず記載する(領収書は必ず保存する)
従業員がいない場合には、福利厚生費は使えない(福利厚生費はあくまで従業員に対する慰安であるため)
家事関連費の按分計算
「 家事関連費 」とは?・・・事業と生活の両方に関係する経費
☆ 合理的な基準により、『業務用部分』と『家事部分』に按分する
店舗併用住宅等、水道光熱費(メーターが区分されていない場合)固定資産税、火災保険料、修繕費、減価償却費、借入金返済の利息、自動車の燃料費など
↓
使用面積や電灯の数、使用頻度等、その内容(科目)に応じた合理的な基準により按分を行う
※ 家族で、食事に行った費用等 → ☆ 生活費として経費から除外する
借入金の仕訳(長期借入金と短期借入金の違い)
法人には1年ルールがある・・・1年以内の返済は短期借入金、1年を超える返済は長期借入金
現金がどうしても合わない場合にはどうすればいいのか?
※ カッコ内は個人事業の場合
実際の現金残高が帳簿より少ない場合・・・短期貸付金(事業主貸) / 現金
実際の現金残高が帳簿より多い場合・・・・現金 / 短期借入金(事業主借)
帳簿を実際の現金残高に合わせるようにする
現金商売の場合には、現金を毎日合わせる できれば売上代金を翌日に通帳入金する
経費になるものとならないものの区別はどうしたらいいの?
事業に関係するものはすべて経費になると考える(スーツはダメ、作業着はいい等)
税務署は短時間でどうして脱税が分かるの?
取引の流れ、領収書や請求書、帳簿の流れから、どこを調べればいいのか分かるのです (帳簿がきちんとしている印象が大事です。帳簿が「ずさん」だと、必要以上に調べられる可能性があります。)
銀行手数料の仕訳
雑費 / 普通預金 または、 支払手数料 / 普通預金
1年以内の前払費用は、支払日に経費にできるものがある
1年払保険料、1年払リース料などの定量・定額の経費のみ(毎年継続して処理することが要件)
棚卸高の仕訳の仕方
期首商品棚卸高 / 棚卸資産
棚卸資産 / 期末商品棚卸高
棚卸資産の把握は、できるだけこまめにした方がいい。不要在庫の把握ができる。
できるだけ経費を増やすにはどうしたらいいのか?
未払金の計上・・・商品やサービスを受けていれば、払っていなくても経費を計上できる
当然ですが、架空の経費の計上は、重加算税の対象になるので注意
礼金・敷金を支払った場合
礼金は長期前払費用に計上して、契約期間で損金(必要経費)にする(20万円未満の場合支出時に全額費用処理できる)
敷金は敷金勘定または、差入保証金勘定に計上する
少額減価償却資産の損金算入特例
青色申告をしている中小企業において、30万円未満の少額減価償却資産の取得価額を取得した事業年度に全額損金算入(即時償却)する特例制度ある。期間限定なので、期限に注意。この制度を適用するためには、確定申告書等に少額減価償却資産の取得価額に関する明細書を添付する必要がある。
固定資産税は課税される点に注意。
非業務用資産を業務用に使用した場合の減価償却費の計算
1.個人所有から法人へ転用した場合
法人が個人から時価で買ったと考える。法人は中古の固定資産の購入として取り扱われる(個人は譲渡所得の対象になる)
2.個人所有から個人事業への転用
取得費×0.9×法定耐用年数の1.5倍の年数に応じた償却率×経過年数
(非業務用資産の減価の額の計算は、旧定額法による)
〔注意〕1.5倍した時の1年未満の端数は切り捨て
→ 経過日数に1年未満の端数がある時、6ヵ月以上は1年、6ヵ月未満は切捨て
中古資産を取得した場合の耐用年数特例
原則 |
中古資産を取得した場合は、法定の耐用年数ではなく、今後の使用可能年数を見積もって耐用年数とする |
見積困難な場合 |
法廷耐用年数の全部を経過した場合
利用年数=法廷耐用年数×20%法廷耐用年数の一部を経過した場合
耐用年数=法廷耐用年数-(経過年数×80%) |
売上高の計上基準
商品を引き渡した時点、サービスの提供が終了した時点
請負による収益は、モノの引渡しを要する場合はその目的物を全部完成して引渡した日
モノの引渡しを要しない場合は、役務の提供を完了した日の属する事業年度
売上の請求が月末締めでなく20日締めのような場合には、当然3月21日から31日までの売上も計上しなければならないことに注意
仕入高・経費の計上基準
売上の逆で考える。経費の請求が月末締めでなく20日締めのような場合には、支払いがなくても21日から31日までの経費も未払金に計上できる
経費関連で多いのが架空仕入、架空外注費。領収書や振込みの履歴があればいいというわけでなく、支払先への反面調査も行われる場合がある。あくまでも実態で課税される。
売上と外注費を計上するタイミング
売上の計上より先に外注費を支払う場合には、売上の計上より外注費の計上の方が先行することがありますが、これでは、税務調査において一発で指摘されてしまいます。
このような場合には、先に支払った外注費を「前払金」または「仕掛品」として資産で計上して、翌期にその資産を外注費に振替えることにより売上高と対応させなければなりません。
“貸倒れ”はどのような場合に計上できる?
貸倒損失は、税務署が最も目を付ける項目です。
① 貸金等の全部または一部の貸倒(所得税基本通達51-11)
債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その貸金等の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により通知した債務免除額
② 貸金等が全部の貸倒(所得税基本通達51-12)
債務者の資産状況・支払能力等から見て全額が回収できないことが明らかな場合(担保や保証債務がある場合を除く)
③ 一定期間取引停止後弁済がない売掛債権(所得税基本通達51-13)
→ 「備忘価格」で処理
・ 債務者と取引停止後1年以上経過した場合
・ 同一地域に有する売掛債権が取り立てに要する旅費に満たない場合で督促した場合
貸倒れを処理する際には、その状況を書面で詳細に記録しておき、回収の努力をした状況や、回収不能であることが客観的にも分かるようにしておく。
(業務委託契約書の契約内容の確認・内容証明郵便等の作成)
法人で受取利息・受取配当金がある場合
受取利息と受取配当金は源泉所得税が差し引かれた金額が振り込まれているので、法人の場合には源泉所得税も計上する必要がある
個人事業主で受取利息・受取配当金・固定資産売却益・固定資産売却損がある場合
受取利息・受取配当金は「事業主借」勘定
固定資産売却益は、事業主借
固定資産売却損は、事業主貸
損失が生じた場合
・純損失の繰戻還付は、法人も個人事業も1年だけ遡って前年の黒字と今年の赤字を相殺して還付することができる (国税のみの制度)
<法人の場合>
別表七を作成して、提出 → 10年間の繰越控除ができる(今年の赤字を将来の10年間の黒字と相殺できる)
<個人事業の場合>
第四表(一)損失申告用の用紙に記載して提出 → 3年間の繰越控除ができる今年の赤字を将来の3年間の黒字と相殺できる)
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