|
「金融機関の決算書の見方」
金融機関の決算書の見方は下記の通りです。
第一章 実態財務諸表の作成と分析
銀行独自の保守的観点に基き勘定科目や金額に修正を加えた実態財務諸表を作成しそれについても分析を行っており、銀行としては当然後者の実態財務諸表を、お取引先の財務内容の検討(与信判)や信用格付の基準としています。
実態財務諸表の概要
資産科目を中心に回収可能性のないものや含み損の発生しているものを減額修正します。含み益は原則として考慮していません。
実態財務諸表において含み益を考慮しない理由
本質は未実現の不確実な利益を当てにした経営はリスクが大きいという立場に立つものです。
実態貸借対照表において確認すべき重要科目
実態自己資本を算定する場合、銀行がどんな科目に着目するかですが、それは、「売上債権」「有価証券」「商製品在庫」「貸付債権」「仮払金等の雑勘定」「減価償却費」です。
売上債権
・受取手形(割引・裏書手形を含む)を加えた売上債権の回転期間。
・売上が減っているにもかかわらず売掛金が増えているケースや、特定先の回転期間が長期化、回収不能なものや架空計上分が混入している可能性。
・前期の決算付属明細書と照合した結果、同一金額が計上してある場合、当該債権の回収は困難と推測されます。
長期滞留債権がある場合は、長期滞留の原因は何かなどを調査します。
有価証券
市場性の有無や時価を銘柄別にチェックし、上場企業は市場価格(相場)、非上場企業の株式については当該企業の財務及び事業等の実態を分析し実態評価を行っています。
すぐにキャッシュになるかどうかで考える。
商製品在庫
「事業場の問題点が顕著に表れる勘定」であるとともに「利益操作に利用されやすい科目」でもあるため、銀行が財務諸表分析を通し事業場の競争力を評価するうえにおいて最も重視する勘定です。
「売れないもの」や「流行遅れ品」は全額減額修正し、「商品価値の低下はないが販売に長期間かかりそうなもの」や「季節商品でよくシーズン回しとなるもの」は、回収可能額をキャッシュフローベースで予測し実態修正します。
主要なアイテムについては、アイテム毎に「販売実績」や「粗利率」の推移についての資料をいただき、
過剰在庫は「コスト・リスクの問題」及び「管理上のマイナス」などメーカーの運営にとっては死活問題と考えています。
お取引先の決算書を3期分用意し、各勘定科目について「金額」「回転期間」の推移を分析(同業比較・時系列比較)します。この際、銀行では以下のポイントに注意します。
損益計算書
@売上総利益率
A販売管理費の内容
金額水準・人件費の多募・多額
製造原価報告書
@労務費等の固定費動き
売上高(生産規模)の変動に対しどう対応しているか?
A材料費率
時系列・同業比較においてどうか?歩泊まりの悪化がないか等
B外注費率
外注の内容、内製化の可否及び合理性検証
貸借対照表
@在庫の動き
A売上債権
B支払債務
生産規模が縮小する状況下において固定費合理化は重要
売上減少化において在庫の回転期間が長期化した場合、銀行が必ずデッドストックの増加を懸念し、在庫の中身を確認。主要なアイテムについて販売状況や利益率の推移等を検証。
銀行では、在庫の動きはメーカーの力(商品力・生産技術力など)を端的に表すものと考えております。
貸付債権
特に「関係会社や役員向けの貸付金」は問題になりやすい項目であるため注意が必要
実態債務超過 & 経常赤字
取引銀行の立場からすると、何とか債務超過だけは解消してもらいたい。
含み益ある(遊休)資産の売却や役員による増資などが要請される。
先ず何も増して重要であり、「黒字体質への転換」である。
黒字転換が図れなければ、早晩、債務超過への再転落は避けらず、必ず確実な経常黒字転換策をセットすること。
短期間に債務超過を解消できる目処があれば、銀行はさほど心配しません。
債務超過解消に長期間を要するとみられる場合、銀行は非常に不安を抱きます。
「毎期利益を計上しているものの微々たる金額」「営業或いは経常段階では赤字ながら最終損益は黒字」などの場合は、損益の実態はマイナスではないかとの疑念を持たれることもありますので、赤字を避けるためあまり無理な決算調整や処理を行うと、返って裏目になるため注意を要します。
第二章 キャッシュフロー分析の重視
1. 銀行がキャッシュフロー分析を重視する理由
会計上の利益は、経営側による操作が可能(処理方法の選択適用等)であり、かつ、会計処理の変更によっても影響を受ける
キャッシュフローの推移や多寡は損益計算上の利益上に事業の実態を正直に表し業績変化の先行指標となるため、銀行としてもキャッシュフローによって企業(の償還力)を判断する方向へ転換せざるを得なくなってきました。
2. キャッシュフロー推移表による分析
どの金融機関も決算分析に際しては、必ずキャッシュフローの規模・推移を分析・検討していると思います。
フリーキャッシュフロー(実績・予想)推移表
|
項目
|
|
|
|
|
|
|
|
売 上 高
|
|
|
|
|
|
|
|
@ 当期利益
|
|
|
|
|
|
|
|
A 減価償却費
|
|
|
|
|
|
|
|
利益処分
|
B配当金
|
|
|
|
|
|
|
|
C役員賞与金
|
|
|
|
|
|
|
|
Dその他社外流出金
|
|
|
|
|
|
|
|
E キャッシュフロー
|
|
|
|
|
|
|
|
F 運転資金増減(a)+(b)-(c)-(d)
|
|
|
|
|
|
|
|
|
(a)売上債権増
|
|
|
|
|
|
|
|
(b)棚卸資産増
|
|
|
|
|
|
|
|
(c)買入債務増
|
|
|
|
|
|
|
|
(d)未成工事受入金等債務増
|
|
|
|
|
|
|
|
(営業キャッシュフローE−F)
|
|
|
|
|
|
|
|
G 設備投資額
|
|
|
|
|
|
|
|
H投資額その他
|
|
|
|
|
|
|
|
I 簡易フリーキャッシュフロー
|
|
|
|
|
|
|
|
J 本来のフリーキャッシュフロー
|
|
|
|
|
|
|
|
K 投下資本利益率(J÷総資本額)
|
|
|
|
|
|
|
|
財務関係収支
|
|
|
|
|
|
|
|
|
短期借入金増加
|
|
|
|
|
|
|
|
割引手形増加
|
|
|
|
|
|
|
|
長期借入金増加
|
|
|
|
|
|
|
|
現預金の増減
|
|
|
|
|
|
|
昨今は「赤字工事の先送り」や「経費配賦の恣意的操作」が目立ちます。
(1)
赤字工事の先送り
工事は完成していますが、完成工事として経理処理した場合、赤字が表面化するため未完成工事支出金に据え置いているもの
(2)
共通費の恣意的配賦
建設業の経費には工事毎に直接集計できる経費と共通費として配賦する費用がありま す。
建設業の実態調査方法
(1)
銀行が実態修正において確認すべきポイント
@
長期滞留債権の資産性確認(請負工事明細表・完成工事未収金明細等)
・「完成工事未収金明細」中の個別工事について、前期・当期を突合せ同一先かつ金額的に同程度のものを確認します。
・「完成工事未収金明細」中の個別工事で、竣工日から長期経過しているものの資産性を検証します。
A
取下率の動き
「未成工事支出金」と「未成工事前受金」のバランスを確認する → 比率が低下(未成工事支出金の増加)している場合は要注意
(2)
工事台帳のチェック
@
同一工事が重複して計上されていないか
A
進捗割合をチェックし未完成の工事が売上に計上されていることはないかチェックします。
B
一定規模以上の工事について粗利率をチェックし、粗利率が極端に高い或いは極端に低い工事の内容を検証します(ペーパー取引・架空工事の可能性を検証)。
C
工事原価の内容をチェックし、不合理な原価構成(外注のみで丸投げとみられるものは業者間で発注書・請求書を切り合うペーパー取引の可能性あり)の工事を検証します。
実態調査の進め方と見極め
建設業者の中には財務的に疲弊している先が多いため、実態把握を優先し財務実態がどの程度弱っているか、営業力・施工能力等の競争力はどうかなどを検証・見極めます。この場合、「請負契約額とその出来高及び未成工事支出金勘定との金額の関係」や「工事利益率の変動」「取下率の動き」等の数字を分析しますが、最終的には「工事台帳」や「実業予算書」による分析が決め手となります。
|